自分は頭が悪いと主張する生徒さんがいた。言ってくることに対して、甘ったれてんじゃねえよと叱ったところで、どうせ自分はダメなのでとさらに自分を落とし始めることになる。どこにも行きつかない。
「頭わるいし、才能ないし、興味も持てない。自分バカなんで。」
勉強ができない理由を考えようと思えば、いくらでも考えられる。
問題はやるかやらないかで、できない理由とかどうでもいい。理由考えるより、どうしたらできるのか、とにかくやってみようよ。うまくいかせるためのやり方はあるし、それは伝えられる。だからまずはやってくれ。結局できない理由なんてのは、やらない言い訳でしかない。
などと正論を述べたところで、自分はバカだと思い込んでやらないで済むように自分を守っている彼には届かない。
「そもそも親のレベルが低いんだから自分がこうなのは仕方ない。」
「先生の教え方が悪い。学校が悪い。教育制度が間違っている。」
親も先生も完璧じゃないし、いつも正しいわけでもない。ただ、先に生まれて知っていること経験してきたことはある。それを生かすのもほっとくのも自分次第だし、年をとるごとにきついことを言ってくれる人はいなくなっていく。何か言ってくれるのであれば、それはありがたいことだ。
教育制度が変更され続けているのは、それが時代の状況に合わなくなっていたり、社会の中で教育機関に求められていることと実態がずれているからで、それが何かしら良い方向に向けるために試行錯誤があって変えられているのであれば、悪くはないだろう。学校の先生をはじめ教育に関わる心ある人は、いろいろ難しい状況がある中で自分の持ち場でできる限りの努力をしている。
なんだって人のせいにすることはできる。まわりのせいにしておけば、自分は責任を取らずに済む。楽な道だ。でも、結局自分ができないでいることの結果を引き受けることになるのは自分だ。
などと反論しようもない正論を色々と述べてみても、またまたできない理由が出てくる。
「脳に欠陥がある。なんとか障害かもしれない。病気かもしれない。」
不安に感じてうっかり専門家の手にかかったら、診断マニュアルに従った科学的根拠があるように見せかけたそれっぽい病名をつけられる。ディスレクシアとか発達障害とかなんとか障害とか。それでああ自分は病気なんだと病名をつけられて安心したところで、自分の人生から逃げられるわけでもない。
こんな話をしたところで、意地でも、自分はバカだから勉強は無理だ。と言ってくる。延々とできない理由が出てくる。それだけいろんな理由が出てくるんだから、十分頭は働いてる気がするが、付き合うだけ時間の無駄。
別にそれは正しいとか間違っているとか議論したいわけでも議論に勝ちたいわけでもない。勉強ができないのであれば、できるようになってもらいたいだけ。それが目的。私が議論に勝ったとしても、彼が勉強できるようになるわけではない。
とにかく数学の成績がひどいので何とかしたいという気持ちはわずかながらある。ならば数学、算数で段階を下げて、以前できていたというところから、順番に練習させていく。何年も前にやっていた段階に戻す必要があるかもしれない。とにかくできていたのはどこまでなのかを見つける。
意味があやふやだったり、
知らない用語は、理解できるように手伝う。
数学だったら特に記号の意味が重要。
+、ー、=などなど
これが何を意味しているのか、
いつも使ってるからわかったつもりになっているけど、
「=」
が何を意味しているのか、なんとなくわかったつもりでいて、十分な理解がないから、ただの計算式と方程式を混乱させてしまったりする。
一つ一つ用語と記号の意味を理解させた上で、何かの問題が解ける度に、
すげーよ。できたじゃんか!!
と言う。いちいち言う。毎回毎回しつこく言う。
慣れないうちはムッとされたりと予想外の反応が返ってくることもある。でも、そんな態度を取っていたとしても、言い続ける。
本人が意地でも自分はできないと思い込んでいるのは、
周りからダメだダメだできないできない
と繰り返し繰り返し繰り返し言われ続けた結果。
小さい頃から誰か身近な人に、ダメだ、できないなどなど否定的なことを言われて続けたら、自分はダメなんだと思い込んでしまう。
最初は、些細だったり簡単なことでいいので、自分はできるってことに自分で気がつくよう仕向けていく。
それができたら、できることの量や質を少しづつ増やしていく。
一人一人の様子を見つつ、引っ張りあげていく作業で、手間はかかる。
でも、最後には自分で勉強を進められるようになっていく。
なにか、結果を出さなくてはいけない状況で、
病気だとか脳に問題があるとか、才能がないなどなど、
理由を考えたところで、どこにも行き着かない。
自分がバカだと言うのは元々は誰かが言ってきた意見であって、事実ではない。
あなたは、バカじゃない。
やり方を知らないだけ。
勉強のやり方については、こちら。