あくびをしていたら、隣のごつい黒人男性が、疲れるよな。それが旅ってもんよ。とか話しかけてきた。
帰りのアメリカ国内便。満席の小さめのジェット機。私のシートは一番後ろから3列目の通路側。地方の空港からワシントンDCに向かう。そこで乗り換えて東京に帰る。
今朝5時起きで4時間しか寝てなくて、眠いんだけど機内はうるさくて寝られない。
ダブルブッキングで、別の飛行機を飛ばすために移動する乗務員を乗せるために、一人の乗客を警官が大けがをさせながら無理矢理引きずり出したことが、最近ニュースになっていた。そんなニュースが広く流れている状況で、まともな社員だったらもうそれ以上会社の評判を落とさないように気をつけて慎重に業務を遂行するだろう。だからまさか二回目はないだろうし、大丈夫だろうと思って自分を納得させて飛行機に乗り込んだ。ところがだ。
その乗客引きずり降ろし事件も、事後対応も含めたくさんのミスが重なった結果起きたこと。
予約がとられていてもある決まった割合の客が現れないことは確率的な事実。なので、損失を最小限に抑え、飛行機を満席にするために実際の座席分より多めに予約をとるのが通常の運用。それでもし座席分より多い人数がチェックインしていたなら、搭乗前の段階で、いくらかのマイルだったり金額で後の便に回ってもらうアナウンスが空港で流れる。もし集まらなかった場合金額が上がっていく。場合によってチケット代以上の額が入ってくるので、旅慣れている人はそのアナウンスを聞いたら受付カウンターにダッシュする。
ただし、その事件の際は、既に搭乗済みの段階で、ダブルブッキングが発覚。さらに、降機してくれる乗客を募集する際に、金額をつり上げていく運用を怠った。本来の運用が行われていれば、このような事態は起こらなかったはず。
さらに、事後対応もひどかった。乗客に非があったという釈明があり、その後大炎上した後になってからの謝罪。
いろいろと対応がひどすぎた。
そんなことがあり、今回私が飛行機に乗り込む際にまあもう大丈夫だろうと自分を納得させる作業が必要になった。
2時間の飛行の後、ワシントンDCの空港に到着。着陸時の地面からの衝撃とスピードを落としたための後方からの急激に力が加わる。
それと同時にドカドカドカっと何かが後ろから飛んできた。
なんだ?非常事態かと周りを見回すと、1リットルのミネラルウォーターのペットボトルが、十数本転がっている。
幸い誰かにぶつかってけがしたりとかいうことはなさそうだった。そばに落ちていたペットボトルを拾い、スチュワードに渡そうとしたら、どうぞ!欲しい方には差し上げます!
すかさず隣の黒人男性は手を上げて、くれ!!
ペットボトルを受け取って、あっはっはと笑いながら私に肘をつんつん当ててきた。
私もつられて笑ってしまった。
もちろん、航空会社は、やらかしてしまったことに対処する必要はあるし、今後の改善策をたてて実行し、信頼を回復させていく努力は必要だろう。しゃれにならない状況の人もいることは分かっている。
でも、旅人としては、笑ってすませられることだったら、それですませてしまった方が楽しい。
あの黒人男性の態度は好きだ。
しょうがねえなあ。あっはっは。