ほとんどの宗教は平和と平穏な生活、個々人の精神的な向上を目指している。
では、それをどのように実現するか。明確な結果のでる技術、ノウハウが必要である。
祈って何かが解決するなら祈ればいい。でもそれは目的を達成するための確実な手段ではない。
部屋の明かりをつけたいなら、スイッチを入れる。
バイクのスピードを上げたいならアクセルを回す。
祈る必要はない。ただやる。
で明かりがつく。スピードが上がる。意図した結果が生まれる。
昔、仕事でビルの窓拭きをしていた。その話をすると、怖くないのか、危なくないのかと聞かれる。
事故を起こさないために、ブランコをぶら下げる本ロープの他に本ロープとは違う場所に結びつけた補助ロープを下ろし、そこに安全帯をつなげる。
そうすれば、もし万が一、一本のロープが切れたりほどけたとしても、
もう一本のロープに体が繋がっているので落っこちて全身打撲で病院送りになったり、頭から血を流して脳みそが露出するような事態は防げる。
仕事中は道具と窓の表面に注意を置いて、窓ガラスの汚れが落ちているか、汚れやふき跡が残っていないかどうかを見ておく必要がある。
落っこちる恐怖を感じつつ無事を祈りながら、大量の窓ガラスを綺麗にする作業などできない。
もっと言えば、その仕事の目的は、大量の窓ガラスの汚れを落として過ごしやすい環境を維持することである。
事故を起こさないことは、目的ではなく、目的を達成するための前提条件でしかない。
事故を起こしたなら、それは運が悪いせいではなく、信仰が足りないせいでも神様やら誰やらのせいでもなく、自分が対策を怠ったせいだ。
だから自分がやるべきことを正しく行っていたら怖くないし、危なくもない。祈る必要はない。
新聞の見出し、テレビで、ダラスで白人の警官が黒人に射殺されたというニュースが流れていた。
白人と黒人の間に人種間の対立があるという解説。
分断されるアメリカ。
もっともらしく聞こえるが起きていることをただなぞってるだけのかっこいい言葉。
事態はもっと悪くなっていくだろう。
これからさらに起きてしまう暗い未来を予測する記事。
起きてしまっていることをはたから眺めて、あれこれ言うだけで何もしなかったら事態は確かに悪化していく。
悪いことは起き続けるだろう。良くないことが起きる未来を想像したなら、それはそうなっていくだろう。
想像した未来が現実になる。
でも、そんな未来を見たいのか?
その未来を選ばなくてはいけない理由はない。
まず、不要な対立がなく人々が協力して仕事したり生活したりしている明るい未来を想像することはできる。
そして、その想像した明るい未来に向けて何をしたらそこに近づいていけるのか?平和な環境を作るためにできる確実な方法があるはずだ。
ロサンゼルス南部地域でギャングのリーダーたちが集い平和を宣言した話をイタリア人から聞いた。
フロリダ滞在中ホテル1階のカフェで、昔東京で一緒に仕事してたイタリア人の家族を見かけた。
座んなさい。いっしょに食べよう。
目の前で繰り広げられる動きが多いイタリア語の会話。
楽しそうですげえ盛り上がってるのはわかるのだが、なにを言ってるのか全然わからんと思ってたら日本語で話してくれた。
80年代、科学者がロサンゼルスの未来予測をした。
これから世紀末に向けて、犯罪発生率が上がり続ける。
ロスの未来は暗い犯罪都市。
でも、実際には21世紀に入ってからの大勢の努力によって穏やかで平穏な環境が作り出されてきた。
21世紀に入って15年間ずっとロスの犯罪発生率は下がり続けている。
以前とは比べものにならないくらい安全に過ごせる都市になってきている。
でも、治安の悪い地域がまだある。
ロスの南部、数多くのギャングのグループが存在し対立しあっていた。
街を一人で歩いているとあっという間に襲われる。撃たれる。誰であろうと近づくと命の危険があると言われる一帯。
最近この状態を変えようとした人がいた。
有名ラッパーThe Gameとネーションオブイスラムの牧師Tony Muhammadが
ラジオ、インスタグラム、大量のチラシで南部地域のギャングのリーダーたちに呼びかけた。
「俺たちはお互いに話す必要がある。地域の若者達に対しての影響、どうやってお手本を示すことができるか?」
南部地域のギャングのリーダー達がサイエントロジー教会コミュニティセンターに集まった。
さらにロサンゼルス市長と警察署長、様々な宗教コミュニティのリーダーが集まった。
総勢2500人が集まった。
ネーションオブイスラムの牧師Tony Muhammadが呼びかけた
「平和と協調を求めるならば拳を上げてくれ」
そこにいる全員が拳を上げて応えた。
平和で安全な環境を作るための具体的な地域での活動。
Losの南部も、通りを歩くのに祈る必要はなくなる。